東京ゲームショウ2024で,GAMEDUCHYが鉄道シミュレーションRPG「レゾナンス:無限号列車」(iOS / Android)を試遊出展中だ。リリースは2024年内を予定しており,事前登録者数は10万人を突破している。
“無限”の“列車”という字面だけで,日本のアニメファンだけにとどまらない大多数派が,ピクッと勘づくものがあるだろう。だが読み仮名は「無限号」(エターナル号)とのことである。問題ないね。
本作は,全世界3000万プレイヤーを突破したロボット系スマホゲームの最高峰「機動戦隊アイアンサーガ」を手がけるGAMEDUCHYの新作だ。
アイサガはアイサガで,ジャンルを変えたロボット対戦格闘ゲーム「アイアンサーガVS」を出展しており,現地の模様も華やかだ。
話を戻すと無限列車ゴホッゴホッ。レゾナンスではバリッてるロボでおなじみの大張正己氏と,アニメ制作会社Production I.Gがアニメーション部分で制作協力しているという。当のアニメは公式サイトでも見られ,“熱い”BGMは作曲家の澤野弘之氏が担当するとのことだ。
余談だが,ここ最近の「(2D・3D問わず)アニメーションにも力を入れてます!」な大型新作ゲームは,公式サイトのファーストビュー背景にアニメ動画を使用する作品がかなり増えてきた,とだけ報告を。
本作は“鉄道経営”をテーマに,スマホナイズされたRPGとSLGの要素,さらにカードバトルを融合したゲームだ。市場では星を駆ける蒼穹の列車も大賑わいだが,ジャンル面では競合していないと言えよう。
舞台は,未知の存在「Selene β」により争いが広がった近未来世界。「コロンバ商会」の車掌となったあなたは「エターナル号」に乗り込み,鉄道を中心とした都市建設で世界を救っていく。
鉄道でさまざまな陣営の乗客たちと出会い,貨物や乗客を輸送して高収益を目指し,ときには災変後の美しい景色に目を奪われる。
基本的には美少女多めだが,イケメンもチラホラといて,鉄道でのアプローチながらビジュアル性もしっかりと力を注がれている。全キャラクターがLive2D仕様のようで,目の潤いも十分である。
実際にゲームに触れてみると,遊びのサイクルはストーリーを進めてバトルするオーソドックスな流れだ。ただ,それを進めるためのアプローチとして“目的地まで電車で走っていく”特徴がある。なにかとっかかりがなければ「その他大勢」と,カテゴライズされそうなスマホゲーム界隈で,レゾナンスならではの独自性を表現できている。
電車は「発進」「停止」「後退」を操作できる。進路はマップから選んだ場所に直進するだけでアクション性は薄めだが,雰囲気は出ている。また,電車は機関のアップグレード,車両編成・外観・内装などのカスタマイズや,乗り組み要員次第で高まる効率性なども備わっている。本当に,細かく複雑な項目がこれでもかというくらい備わっている。
軽い言葉かもしれないが,「鉄道好きならそれだけで――」。
なんて表現をしたくなるくらいには,鋭く尖っている。
あらかじめ良くも悪くとも書いておくが,本作はとにかく“各場所でアクセスできる項目の先に,細かなコンテンツがビックリするくらいてんこ盛り”となっている。ぶっちゃけ「初見じゃ複雑すぎて分かんない!」のひと言でまとめるほかないのだが,フィーリングが合ったうえで付き合うことができれば,かなりの沼度を予感させられる。
列車を軸とした内政要素はもちろんだが,このほか美女とお茶を飲める(瀟洒なアニメ付き),ラーメンを食べて好感度UPなど,「なるほど。なんで?」と思うが,目を引くものがたくさんある。たくさんありすぎて,申し訳ないが網羅して紹介することを早々に諦めた。
こうした多様なコンテンツは実際に遊び続けていると,「ああ,べつに触れなくていっか」というのが分かってくるゲームも少なくない。本作もそれに該当する可能性はある。ただ,この複雑さは“近未来の崩壊世界で列車旅をしながら内政”という世界観を加味すると,どうにもゲームの奥行きに説得感を与えてくる,なんて思えてしまう。
戦闘については,基本的にオートバトルで進行する。ただ自動攻撃は最低限のダメージを出力するだけで,“一定時間ごとに手札に加わるスキルカードをプレイ”して,スキル攻撃を与える必要がある。
カードについては,これまた人形ごとに攻撃・回復・補助などの細かな効果があり,試遊レベルで内訳を判断することは不可能だ。
そのうえで操作は正直,「常に手札を加味して取捨選択。最適なコンボをつなげるように切る切る切る!」といった感じで,セミオートどころか普通に忙しいと思えた。感覚は違うのだが,昨今では物珍しくなったTCG式の大型筐体の対戦アーケードゲーム的な忙しさに感じた。
といっても,パーティは試遊相当に強化されているので,なにも考えずにひたすらカードをプレイしまくってもTGS版ではなんとかなる。
本作は総じて,ちょっと触れる程度では理解が追いつかない。スタンダードなスマホゲーム的な作りに見えて,なにか違う。
自慢ではないが,私は短時間の試遊でもゲーム内容をしたり顔で話せるくらいには,この道に長けた能力を持っていると自負できる。今までもけっこうそれでなんとかしてきた。だが,わりとけっこう触れたのに,いろいろありすぎて理解しきれなかったタイトルは珍しい。
最初に悪く言うと,本作は「いろいろありすぎて分からないゲーム」そのものだ。当然,遊びはじめたのときは丁寧なチュートリアルで説明されるだろうし,今回は初っぱなから全容に触れたせいで分からなかっただけかもしれない。でもそこがスゴい。ローカライズ自体はほぼできていて,文字も分かるのに分からない。「誰にでも分かりやすいものを」と意気込むゲーム作りが普遍と言える現代で,レゾナンスはそこを逸脱している気がする。複雑すぎるゲームな気がしてしまう。
そのうえで最後に良く言うと,個人感情としては上記のような懸念はなかった。本作は,スマホゲームのメインウェポンたるお手軽さに反旗している節がある。それも他作品との差別化に努める,などとお堅いミッションのためではなく,「こういう要素もあったらおもしろいよね!」と取り入れているようなやんちゃさを感じてしまう。だからこそ,得てして作業ゲーと言われそうな多機能も,理解したらちゃんとハマらせてくれて,楽しく思わせてくれる――そういう強度があるゲームだと結論づけた。
正直,TGSでの試遊はおすすめしきれない。おそらく過半数が,自分がなにをやっているのか理解できないだろうから。けれど,自分のデータでプレイできる日がきたなら,ぜひともやってみてほしい。「ハマる人はハマる」という言葉が,これ以上ないほどに似合うスマホゲームだから。