スーパーファミコン向けに発売されたRPG『ロマンシング サ・ガ2』

『ロマサガ2』リメイク版レビュー。遊びにくかった部分を改良し、名作がさらなる傑作へ。やり応え満点の七英雄たちとの長き戦いは、初心者の人にもオススメ!

 スクウェア・エニックスより2024年10月24日に発売されるNintendo Switch、プレイステーション5、プレイステーション4、PC(Steam)向けタイトル『ロマンシング サガ2 リベンジオブザセブン』。

本作は1993年にスーパーファミコン向けに発売されたRPG『ロマンシング サ・ガ2』(以下、『ロマサガ2』)をもとに、3Dグラフィック化やボイス追加、システムの追加など、多数の調整を加えたフルリメイクタイトルだ。

初心者にも遊びやすい『ロマサガ2』

 物語の舞台となるのは、かつて世界を救った“七英雄”の伝説が残る世界。ある日、バレンヌ帝国の皇帝レオンは、その七英雄が人類を脅かす存在となって戻ってきたという噂を聞きつける。そして七英雄のひとりであるクジンシーが帝国を襲うところから、宿命の戦いが動き出す。

 帝国の皇帝たちは謎の占い師オアイーブより授かった“伝承法”により、先代の能力と記憶を引き継ぎながら、世界の脅威となった七英雄たちと長きにわたる戦いをくり広げていく。

 『ロマサガ2』は、『ロマサガ』シリーズとしては2作目(『サガ』シリーズとしては5作目)にあたる、いまなお根強い人気を誇るタイトル。2011年には追加要素を加えた携帯電話アプリ版、2016年にはグラフィックを美麗にし、さらに追加要素を加えたリマスター版も発売された。

 3Dグラフィックでフルリメイクされるのはこれが初。往年のシリーズファンはもちろんのこと、新規プレイヤーの獲得も見据えて、数々の変更・調整点が加えられている。

 たとえば、オリジナル版『ロマサガ2』のバトルは難度が高く、ゲーム内で仕様の十分な説明がないために理不尽だと感じる部分があったものの、本作ではそれらが全体的にわかりやすく、やりやすくなった。また、バトルの難易度選択が可能になり、本作の一般的な難度である“ノーマル”、戦闘をサクサクと進められる“カジュアル”が選べるので、初心者でも安心。ハードな戦いを楽しみたい人向けに、原作準拠の高難度バトルが楽しめる“オリジナル”もある。これらはゲーム中、いつでも変更可能だ。

 一方、イベントの進行方法などは、だいたいオリジナル版そのまま。自分の選択で展開が変わるイベントや、どの地点から攻略していくかによって道筋や発生イベントが変わったりする“フリーシナリオ”システムの魅力はオリジナル版と同様に楽しめた。

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 今回のレビューは“ノーマル”難度で最後までプレイ。「ノーマルだから比較的サクサク進められるだろう」と予想していたが、蓋を開けてみると別にそんなことはなく、歯応えのある場所はしっかりと歯応えが感じられ、とくにボス戦の骨太さはしっかり味わえる。通常の敵(いわゆるザコ敵)との戦いでは、窮地に追い詰められることは少なかったかな、といった印象だった。

 ちなみに開発を担当しているのは『聖剣伝説3 トライアルズ オブ マナ』も手掛けた開発会社、ジーン。こちらもプレイした筆者としては、随所から「同じ会社が作ったんだな」と思うエッセンスが感じられた。

3Dで表現された新たな冒険

 3Dになったグラフィックは、AAA級タイトルのように「格段にキレイ!」というわけではないが、アニメ調のデフォルメが利きつつ、王道ファンタジーの世界観に合うようにまとまっていて、筆者としては違和感ナシ。8等身の超リアルなキャラクターたちになるとシリアスすぎるだろうし、かといって3等身くらいにデフォルメされてしまうと、リマスター版をただ3Dにしたような印象にもなりそうだし。

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 本作は敵やイベントキャラクター、そして仲間キャラクターの数が非常に膨大で、それらがすべて3D化されているのがとてもリッチ。

 各クラスのキャラクターは、オリジナル版ではカラーリングが違うのみだったが、リメイク版ではそれぞれ髪型や服のデザインなどが異なっており、年代が変わるたびに「おお、こんな見た目もあるのか!」と驚きながらプレイしていた。あまり変わらないクラスもあるにはあるが(亜人種はとくに)、プレイヤーそれぞれ、個別にお気に入りのキャラクターが生まれそうな予感。

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 キャラクターもさることながら、背景グラフィックもかなりリメイクされている。簡素だったダンジョンが大幅にブラッシュアップされていたりと、冒険感も大きくアップ。

 全体の見た目からくる印象はガラリと違いつつも、遊んでみると『ロマサガ2』らしさ満点。シリアスなシーンはカッコよく演出できる一方で、コミカルかつツッコミどころのあるシーンも内包できる、バランスのいい世界観にまとまっていた。

地域を制圧していく独特の皇帝RPG

 さて、『ロマサガ2』は一般的なRPGと少し異なり、主人公の視点から物語に沿って順々に冒険していくゲームにはなっていない。“皇帝”が主人公にはなるが、皇帝は代々変わっていき、序盤と最後以外は、誰が皇帝になるのかもプレイヤーの選択に委ねられている。

 最序盤のみ、ほぼ決まった道順で進んでいくが、その部分を終えるとどの地域を、どのイベントを順番にこなしていくのかをプレイヤーの選択で決められるのがポイント。“このイベントを優先してこなしたら、別のイベントに影響があった”みたいな要素も多く、プレイヤーそれぞれの“歴史”を歩めるのが魅力のひとつだ。

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ゲーム開始時に名前をつけるキャラクターが、自分の分身となる。ダサすぎて自分の名前をつけるんじゃなかったと、やや後悔した。 また、ゲーム内には年代が存在し、大きなイベントを終えたりすると、100年くらい進む。年代が変われば世界情勢が変わったり、都市が豊かになったり、はたまた滅亡の危機になったりと、時代の経過が描かれるのも特徴だ。その都度、皇帝&仲間もつぎの世代のキャラクターに移り変わる。

 年代が変わったときや、現皇帝のLP(ライフポイント)がゼロになったとき、パーティが全滅したときにつぎの皇帝を選択する“皇帝継承”システムは『ロマサガ2』の大きな特徴。この皇帝継承はオリジナル版よりもやりやすくなっており、ある程度の法則に則って提示される6人のキャラクターから、つぎの皇帝を決めるようになった。

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 基本的に、パーティメンバーにいたクラスからつぎの皇帝候補が選ばれるようになっているが、少しランダム性は残っているので、「つぎの皇帝はあのクラスにしたかったのに、選ばれなかったなあ」という状況になる場合もある。それはそれでおもしろいところで、「このクラス、使ってみると案外いいな」と思えたりするのも、本作の魅力だ。

 また、皇帝の椅子に座ることで“皇帝退位”が選べるようになり、何かしらの事情で皇帝を交代したいとき、気軽にできるようになった。2世代連続では使用できないが、退位のおかげで自分の遊びたい皇帝を選びやすくなったほか、特定のクラスを皇帝にしたときのみ得られる恩恵も、取得しやすい。

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 ちなみに、先述したイベントクリアーによる年代進行は通称“年代ジャンプ”というシステムで、戦闘をこなしたり、一定数のイベントをこなしたりすると発動する。七英雄を倒すほどの大きなイベントを達成すると発動しやすいが、細かいイベントでも蓄積すれば発動することもある。

 リメイク版はかなり細かいとこまで遊びやすくなっているので、ここまできたら、年代ジャンプがいつ発動するのかも確認したかった。とはいえ、不意な年代ジャンプでゲームが進行することも本作の魅力ではあると思うので、あえて確認できないようにしているのだと予想する。

ボイスがイベントを盛り上げる!

 イベントシーンは主要のイベントがボイスに対応しており、ドラマ性がよりアップ。各クラスキャラクターの初登場シーンなどはすべてボイス付きで、見どころ満載だ。

 有名な「アリだー!」はオリジナル版ではなんだかシュールな空気感だったのだが、ボイスが付いたことにより、“アリ”が人々を襲う悲惨さが演出されていて、感じたかたがとても変わった。終盤に起きるアリイベントは、もうそれはもう悲惨で悲惨で、辛すぎた。

 ちなみにジェラールの「はい、はい」もボイス付き。ああ、そういう感じの「はい、はい」だったのかとちょっと驚いた(笑)。あと、吟遊詩人関連のイベントもボイスありならではの演出になっていて、すごくよかった。

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 キャラクターたちのモーションも非常に凝っているほか、演出も多彩。2Dでくり広げられていたドラマを3Dに落とし込みつつ、独自のカットシーンに昇華させている。ボス格の敵と戦うときには、決めポーズとともにバトルに入るのも気持ちがよく、どれもテンションが上がった。

 また、踊り子の踊りを見るイベントがあるのだが、踊り自体がメチャクチャ凝っていて、さらにバリエーションも1個だけではない。どのイベントも結果や過程は知っていながら、ワクワクしながら楽しめた。

 ただ、仕方ないことだとは思うが、本作は決まった主人公がいない影響からか、序盤と終盤以外は皇帝がボイス付きでしゃべるイベントシーンが少ない。皇帝が選択肢か身振り手振りだけでコミュニケーションをする点については、ボイスが付いたからこそ少しだけ気になった。

自由な攻略がやりやすい

 どの地域を攻略するのかを自由に決められる本作だが、オリジナル版ではほぼノーヒントのため、どこに行けばいいのか、誰に話しかければいいのかわからない部分も多かった。本作では、イベントリストのような形で目的が一覧で見られるようになり、自分がいま何ができるのか選択しやすくなっている。

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 おかげでイベント攻略を始める際に迷うことが減ったほか、取捨選択しやすくてとても遊びやすかった。全部が全部案内されるというわけじゃないのもよかったポイントで、隠れたイベントや、まだ自分から訪れていない場所の出来事に関してはガイドされないのもいい塩梅。

 また、一度でも訪れた場所は、ワールドマップから基本いつでもファストトラベルが可能。原作でもダンジョン以外であれば気軽に移動可能だったが、本作ではダンジョンの攻略中だとしてもワープできるので、地域ごとの移動面に関してはストレスなし。ただし、一部イベントシーン中などは不可になっている。

 たとえラストダンジョンだろうとファストトラベルできるほか、主要拠点となるアバロンは、施設ごとにワープ地点が用意されているので、施設へのアクセスもしやすい。また、ダンジョンや地域に複数の出入り口がある場合、一部はどこにワープするかも選べるようになっている。

 そのため、地域移動に関するストレスは完全にゼロ。「技の付け換えを間違えた」、「メンバーをやっぱり変えたい」などという場合も、即ワープしてしまえば、すぐにやり直せる。なにかしらのピンチ時の脱出に使ってもいいだろう。

 前述の通り、バトルはやりやすくなったが、イベント攻略自体の難度はだいたい据え置きで、順序やタイミングなどでイベントを逃してしまったり、選択肢によって二度と前の状態には戻らなくなったりするのはそのまま。このあたりはとくにやさしくなっておらず、『サガ』らしいストーリー展開をそのまま楽しめる。

攻略の幅が広がったバトル

 バトルはオリジナル版の魅力は踏襲しつつ、本作ならではのタイムラインバトルを実現。オリジナル版は1ターンごとに全キャラクターのコマンドを選び、それからターンの行動が始まるものだったが、本作ではキャラクターのコマンドを選ぶと即時に行動する。

 行動順はステータスなどで左右され、画面左上のタイムラインに沿って敵味方が入り乱れて戦うようになった。「一斉に行動が始まるからこそ生まれる戦略もよかった」といった意見もありそうだが、キャラクターごとに行動するからこそ本作ならではの戦略や考えかたも生まれ、これはこれでよかったように思う。

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 なにより、戦闘のテンポがとてもスピーディーで遊びやすい。1回の戦闘が1分内で終わることも少なくないほどにテンポがよく、コマンドをポンポン選ぶ独特の爽快感があった。ただ、1回選んだコマンドをキャンセルすることができなくなったので、慎重に選ばないと思わぬミスが生まれることもあるだろう。

 ちなみに、デフォルトではワンボタンで攻撃するが、豊富なオプション設定のひとつに“攻撃時のコマンド選択”を2段階方式にする方法もあるので、そういった部分でミスへの保険を掛けることも可能だ。

 なお、敵の行動順をどうにか変える手段は乏しいため、『サガ エメラルド ビヨンド』のように、タイムラインを動かすことが重要なシステマティックな作りにはなっていない。「敵が行動する前に、行動を停止させる“スタン”を決める」といった戦術は取れるが、そもそもスタン不可の敵も多かった。

 敵がどんな行動をとるのかは予測するしかないが、敵が先に動いてしまうと対策すら取れないので、筆者は全編通して、パーティ全体が敵より早く動くことを心がけていた。タイムラインはあくまで、行動の指針のひとつになる要素といったところ。なおボス戦では、ボスが強力な行動を取る前にはアラートが出るので、それは参考にしよう。

ダメージが気持ちいい!

 原作では“敵にやられる前に倒す”みたいな戦いがメインだったと思うが、通常のバトルではある程度温存しながら戦い、ボス戦に備えておく必要があった。

 本作では、技・術の発動に必要なBP(本作では術もBPを使用する。JPは廃止)の最大量が大幅に増えたので、通常の敵との戦いでも全力を出しやすくなったほか、ボス戦前にはだいたいBP全回復地点が置かれており、ボスにも全力で挑みやすくなっていて、とても遊びやすい。

 ボス戦は“やられる前に倒す”というよりは、長期戦になるケースが多い。「とにかく高火力を出せばいい」のではなく、しっかり攻撃&回復をしていく必要があり、コマンドRPGらしいバトルが楽しめた。もちろん原作にもその要素はあったが、それがより整えられたというか。

 また、敵のHPと敵に与えるダメージ数値は全体的に大幅アップ。数値の派手さがパワーアップしていて、終盤ともなれば1発10000ダメージ超えは当たり前の戦闘が続出し、かなり爽快感があった。味方の食らうダメージ、HP数値についてはだいたい原作と同じ(ノーマル難度なので緩い部分もあったが)。

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弱点&連携が熱い!

 覚えた技・術を使ってダメージを与えて敵を倒していくのは、原作と同じ。本作では敵ごとに“弱点”があり、弱点を突くことがとても重要になっている。弱点を突けば威力が上がるほか、オーバードライブゲージが溜まり、威力倍増の“連携”が発動できるようになるため、基本は弱点を突くことがメインだ。

 もちろん弱点を突かずとも、仲間が成長さえしていれば大ダメージを与えられるので、中盤以降は弱点を重要視せずともいい場面もある。ただ、“連携”が後半になればなるほどものすごく強力になるがゆえに、基本は弱点を突くことをメインに考えるシステムになっていると感じた。

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 連携は、ゲーム序盤では2キャラクターが行動する2連携のみ出せるが、ゲームが進む(具体的に言うと地域制圧数)につれて連携可能数が上昇。多人数での連携で、大ダメージが与えられるようになる。とはいえ、大人数で連携すればそれでいいわけではなく、参加した仲間のターン自体はしっかり消費されるため、回復役を連携に参加させないような順番に組み替える、連携数をあえて減らすなど、独特の戦略性もある。

 弱点は一度でも突けば、敵の名前の下に表示されるので、弱点情報を解放していくのもおもしろい要素。一種のコレクション要素のようになっており、敵ごとに全弱点が判明したときには、ついうれしくなってしまう。

 逆に、敵が耐性を持っている系統(いわゆる属性)については覚えておく必要がある。これは味方に関してもそうなのだが、敵の耐性情報をバトル中にもう少し確認できるとうれしかった。

閃きがわかりやすい!

 格闘または武器による攻撃をすると、新しい技を“閃き”によって習得する場合がある。敵の強さと、キャラクターのスキルレベルの蓄積で閃きやすさが変化。また、キャラクターごとに技の適正が違うため、閃く技も異なる。

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 原作では、たとえば覚えたいと思っている技があるとして、パーティ内のキャラクターがその技を閃く可能性があるかどうかが表示されておらず、ほぼ運まかせでプレイするしかなかった(もしくはゲーム外から情報を得るか)。本作では閃く可能性がある場合、その技に豆電球のアイコンが表示されるので、可能性が視認できるようになった。

 高い確率で閃く場合はアイコンが強く光るほか、技ごとに“閃く可能性の技数、派生先”まで視認できるようになったため、ゲーム内だけで“閃き”の管理ができるようになったのはとてもありがたい。

 視認できるがゆえに生まれるジレンマもおもしろいところで、強い敵と戦っている場合、いま自分が持っている強い技をくり出すのが常套手段だと思うが、弱い技のほうで豆電球アイコンが光っていると、「いや、でも閃きたい……」と弱い技を選択するのか迷ってしまうのだ。

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「範囲攻撃の“ブレードロール”で閃くんだけど、でも相手ひとりだし、BP節約したい……いやでも……」みたいな葛藤が新たに生まれ、これはこれで独自の魅力だと感じていた。 また原作のように、新たな技を閃くために技欄に空きを作る必要はない。最大まで技欄が埋まっている場合、閃いた後にどの技を封印するか決められるようになった。

 ちなみに、技・術は覚えていたものが年代ジャンプ時に施設に登録され、その後は自由に付け換え可能になるのだが、最終皇帝になった後は年代ジャンプが発生しない。そのため原作では、“最終皇帝になる前に、自由に付け換えられるようにしたい技・術を覚えておく”といった調整が必要だった。

 一方、本作では帝国大学をLv3にすることで、“覚えたら即時、技・術・見切りリストに登録”されるようになった。ちなみに装備開発も、鍛冶屋をLv4にすることで、開発完了したら即、ショップに並ぶ。このおかげで、最終皇帝になる前に細かく調整する必要はなくなった。

 なお術は、本作では術の技術点が高い場合に、戦闘終了後に“閃き”によって習得するシステムになった。術使いたちがダンジョン攻略中にも強くなれるようになったほか、閃く楽しみも倍増し、この変更はとてもよかった。

 ちなみに、水と土属性に基本攻撃術が追加されていたり、術にもレベルの概念が生まれ、たとえば“ファイアーボールLv2”は範囲攻撃になるなど、術の拡張にはかなり手が入っている。レベルアップ版も、閃きによって習得する。

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 合成術に関しては、探索でアイテムを発見すれば研究できるようなシステムになった。これは探索を楽しむための要素のひとつになっているだけでなく、強い合成術を覚えられるアイテムをゲーム後半のダンジョンに配置することで、バランス調整の役割を担わせているように感じた。

変わらず骨太な七英雄との戦い

 七英雄との戦いはやはり本作の華というか、原作よりもさらに骨太に作られていて、とても攻略のしがいがあった。とはいえ、原作の対策はだいたいそのまま通用する。通用しつつも、もう1ギミック仕込まれているようなイメージ。

 “初心者向けに整えられた『ロマサガ2』”が本作ではあるのだが、七英雄との戦いだけは完全にプレイヤーを倒しにきているような作りになっていて、そこはやはり『ロマサガ2』らしさを感じるところだった。

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 もちろん直前のセーブデータをロードしてリトライすることも可能だが、バトル中にロードする方法はないので、「このままじゃ勝てない、いまのパーティでやり直したい」と思ったら、一度ゲームを終了させるしかない。ここはゲーム性部分にも関わるため、開発側も悩んだ部分だと勝手に予想しているが、皇帝は全滅したときにも継承することになるので、おそらくゲームオーバーになって皇帝継承することも歴史のひとつとして歩んでほしかったのだろう。

 とはいえ同じパーティで再チャレンジするのが悪いというわけではないので、セーブ&ロードについては各々のプレイスタイルで使うといいだろう。セーブデータは多数残せるので、複数データを作っておくのも手のひとつ。

育成のしがいも上昇

 育成要素は全体的にシンプルになりつつ、やり込み甲斐も増えた。

 武器・術の系統ごとに、技術点自体がいくつ溜まっているのかが視認できるようになったため、バトルしながらキャラクターたちの育成具合を確認しやすい。

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 継承自体のやりやすさ、術技術点の上げやすさなども相まって、キャラクターごとにどんな成長をさせるのか、育成の方針を決めやすい。

 また、弱点を突くことが重要になったため、複数の系統の技を持たせるメリットが多数ある。各キャラクターにサブ武器を持たせることで有利な状況を作れるなど、育成の幅が広がっている。

 複数のクラスを使い込むことにも大きなメリットがある。クラスには“アビリティ”が存在し、戦闘回数を重ねると、クラスごとにステータスアップなどの恩恵が得られる。さらに、戦闘回数をより重ねるとアビリティが“極意”化し、ほかのキャラクターに装着できるようになる。

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 アビリティも、極意化も、いずれもゲーム進行(地域制圧数)によって解放されるので活用できるのは中盤くらいからだが、これにより複数クラスを使い込む恩恵があり、“とにかく強いクラスだけ使う”一辺倒になりがちだった編成に、バリエーションが生まれたように思う。

 ちなみに極意化しても、そのアビリティを持つクラスが仲間にいた場合は、ほかのクラスには付けられない。そのため、数多のクラスを使いながら、別クラスを用意することで真価を発揮するシステムになっている。このあたりは“数々の記憶と経験を皇帝が受け継いできた”感がより強まっていて、とてもいい要素に感じた。

 なお、アビリティの効果はだいたい「まあ、あったらいいよね」程度に抑えられているので、絶対に使わないといけないわけではない。一部、そこそこ強いもの、組み合わせ次第で強くなるものもあるが、面倒だと思う人は同じクラスを使い続けるだけでもオーケー。

 ただやはり、RPGをやり込んでいる人であれば「このアビリティをこのクラスに組み合わせれば……!」と、シナジーを考えるのが楽しくなってくるはずだ。

 ちなみにアビリティは“仲間にならないけれども、キャラクターと絆が深まる”場合からも得ることができ、おかげでストーリーの登場人物の印象がより強くなったように思う。

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パーティ編成が手軽になった

 アビリティの存在や継承も含めて、仲間の管理がグッとしやすくなったのが非常に大きい。複数のクラスに手を出しやすくなったのも、育成の楽しさがアップした理由のひとつ。

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 原作では、“あえて味方のLPをゼロにする”といった、いわゆる“謀殺”によって皇帝を継承したり、パーティメンバーを調節したりしていたが、本作では酒場でパーティメンバーの入れ替えが自由になった。人間性を捨てるような行為は必要としなくなったのだ。意図的にクラスの世代を変えたい場合は……まあ、する人もいるかもしれないが。

装備品もブラッシュアップ

 装備品はだいたい原作を踏襲しており、ダンジョンやドロップでバンバン得られるわけではなく、基本は開発で入手しながら、特定の場所で入手できる武具などを駆使していくのは変わらない。

 鍛冶屋を建設すると拠点で武器・防具を開発できるのだが、本作では開発にお金のほか素材アイテムが必要になった(原作ではお金のみ)。素材取得はドロップもあるが、探索での入手がメインになっている。

 さらに本作では“装備改造”が可能となった。武器を別性能の武器に強化できたりするのだが、メインは“上位修正”できること。

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 “〇〇改”といった改造での上位装備版が登場し、いわゆる型落ちした装備を底上げできるようになったのがとても大きい。

 本作はゲーム進行の順序を自由に選べるがゆえに、宝箱から得られるアイテムの性能がどうしてもバラついてしまう。序盤から行けるダンジョンを中盤に攻略したら、弱い武具が手に入ったりすることもあるだろう。そういった際に改造すれば、使えるアイテムに変貌する場合もあるため、うれしい要素のひとつだった。

探索も遊びが満載に

 探索は原作にはない、本作ならではの魅力になっていて、3Dフィールドゆえの遊びが盛りだくさんになった。まずダンジョンやフィールド系地域は、ものすごく広大になった。オリジナル版はかなり簡素なダンジョンが多かったが、本作ではいずれもダンジョンらしい広さを保っている。

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 フィールドには光るポイントが散らばっていて、調べるとだいたい素材アイテムが手に入る(ときには傷薬なども)。“ここへ行ったら何かありそう”みたいなポイントにはだいたい何か落ちていて、ついつい探し回りたくなる。

 宝箱の中身は原作を踏襲しつつ、数については個数が増えている。追加宝箱のほとんどはお金・素材となっているようだ。

 宝箱は巧妙に隠されていることが多く、3Dマップらしい“建物の影にじつは宝箱があった”みたいなこともあり、しっかりと探さないと見つからないこともある。だが宝箱サーチ機能もある(詳細は後述)ので安心。

 ジャンプアクションも追加されており、ただ段差を飛び越えるだけではなく、ダンジョンによっては足場をピョンピョン乗らないと辿り着かないといけない場面も。それなりの難度がある場所もあり、思いのほかアクション性を求められ個人的には楽しめたが、RPGファンの中には、これが苦手な人もいるかもしれないと感じた。

 ダンジョンは広大ながら、行くべき場所はマップに表示されている。最初からマップ情報が全部解放されているわけではないが、進むごとに視界が開けていくので、迷うことはないはず。また、本当に隠されている場所(穴を調べてくぐる場所など)は近くに行っただけではマップには表示されず、しっかり調べることで解放されるため、マップ探索の楽しみもそこそこ残っている。

 本作ならではの追加探索要素として“せんせい探し”が追加された。各地にいるせんせいを一定数探すと、各地域に宝箱が何個あるのかなどの機能が解放され、次第に宝箱の場所がマップに表示されて探索が捗るようになり、せんせい自体がその地域にいるのかもわかるようになっていく。

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 “せんせい探し”で解放される要素には“閃き確率2倍”など、育成面に関わる部分も半分ほど含まれているので、じつのところ探索ではかなり重要。新しい地域に行くたびに、ついせんせいを探してしまう自分がいた。

 せんせいは『サガ』シリーズのマスコット的存在だが、原作ではいなかったので、『ロマサガ2』の世界になぜいるのか、気になる人は気になりそうかも。せんせいは隠れていることは少なく、風景を眺めていたり、食事してそうだったり、酒場でくつろいでいたりして、各スポットでいろいろなせんせいが見られて、個人的にはかなり楽しめた。

 ちなみにこのシステム、『聖剣伝説3 トライアルズ オブ マナ』のサボテン君探しとだいたい同じ。『トライアルズ オブ マナ』と開発スタッフが同じがゆえに生まれたシステムなのだろう。なんだかうまいミックス要素だなと感じた。

リメイク版ならではのあれこれ

 本作は、基本的にはリマスター版の要素も含んでいるが、リマスター版にあった追加ダンジョンはおそらく廃止され(1周遊んだ限りでは登場しなかった)、リマスター版追加ダンジョンで得られていた要素は、個別のクエストが用意され細分化された。

 たとえば追加クラスの“忍者”、“陰陽師”との出会いもイベント化しており、条件を満たせば仲間になる。ほかにも、新しい陣形が得られるものなどもイベント化している。

 本作追加クラスの“帝国鍛冶職人”と“踊り子”も、いい塩梅の条件・イベントで仲間になるようになっている。

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 これまでに紹介してきた通り、リメイク版は随所に遊びやすくなる調整が施されているが、うれしかったのは“特定のイベントをこなすと、もう二度と行けない場所”みたいなスポットが、極力減っているのもポイント。宝箱の取得を逃してしまった、みたいなことにならないようにしているのだと思うが、基本はどのタイミングでも訪れることが可能で、たとえば序盤のクジンシーの館も、初回訪問時にすべて踏破する必要はなく、後から戻って探索可能だ。

 また、本作の大きな追加要素として、“七英雄の記憶”が挙げられる。各地に散りばめられた記憶を見つけると “七英雄たちがなぜ、怪物の姿となり、人々を襲い始めるまでになったのか?”が描かれる前日譚を、カットシーンで見ることができる。ちなみに、カットシーンはかなり気合が入っている。

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 七英雄の記憶は断片的に残されているが、見つけた後は、アバロンの“帝国大学”で読み返すことも可能。すべて集めてから順番に閲覧すれば、より七英雄の物語が楽しめるだろう。全部集めると何が起こるかは……お楽しみに。

 なお、七英雄の記憶は比較的見つけやすくなっている。ダンジョンの中などで、記憶が見られる端末までのガイドが表示されるので、各地の探索をサボらなければ見つけられるはずだ。「残りひとつが見つからない!」といった場合もあるかもしれないが、それはきっと“まだ訪れてない場所”があるからだろう。

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光る道筋をたどると、七英雄の記憶へたどり着ける。

初心者にこそオススメしたい!

 ほかにも要素は多数あるが、いずれも全体的にいいバランスでまとめられている。『ロマサガ2』の持つケレン味や、『サガ』の生みの親である河津秋敏氏が放つ“河津節”的な要素はやや薄れているものの、広く受け入れてもらえそうな現代的な作品に仕上がっている。

 おそらく従来のファンが気になるのは、グラフィックだったり、システムの変更要素だったりするだと思うが、たとえば“敵のHPが見える”や“閃く技がわかってしまう”といった表示物についてはだいたい非表示にできるので、いつ敵が倒れるかのドキドキ感を残したい人は、豊富なオプション機能を使ってみよう。

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ネレイドは仲間になると人魚の足が消えるが、このあたりは3Dグラフィックになりバトルのモーションを共通にしているため、仕方のない部分かなと思う。下半身が原作のままだと、キック系の技、ネレイド専用モーションになっちゃうだろうし。 戦闘はテンポよくすぐ終わるし、探索もかなり楽なのだが、フィールドはいずれも広くなっているためか、クリアーまでのプレイ時間は大きく増した。筆者はクラスをとっかえひっかえしていたこと、全イベントを網羅する気持ちで遊んでいたこともあってか、クリアーまで約50時間掛かった。人によっては発生しないイベントもあると思うので一概には言えないが、昔のゲームのリメイクとは思えないほどのボリュームと遊び応えについては、間違いなくある。

 まとめると、「よくぞここまで遊びやすくアレンジできたな!」と思いつつ、戦闘の戦略性の幅や、育成の楽しみが大きくアップしていて、リメイクタイトルとして追加要素を入れながらも、かなりうまくできたタイトルだと感じた。

 気になるのは『ロマサガ2』をまだプレイしたことがない、新規プレイヤーがどう感じるのかといったところ。破天荒すぎるイベント展開など、数多の強烈な要素にぜひとも驚きつつ、自分ならではの歴史を紡いでほしい。

 シリーズファンはもちろん購入し、ぜひとも“つぎのリメイク”にもつないでほしいと、いちファンとして思っている。四魔貴族、見たくない?

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